頚椎椎間板ヘルニアの手術について!

頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症・頚椎後縦靱帯骨化症

頚椎椎間板ヘルニアなど頚椎疾患で手術の対象となるのは?

●頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症、後縦靱帯骨化症で手術の対象となるのは、下記のような日常生活に支障があるときは手術の対象となります!X-P、CT、MRI などで鑑別診断します。

◆上肢
手指がしびれて、熱さ、痛さ、触っている感じが鈍い、あまりわからないなどの感覚異常。
箸を持って食事ができない、お箸でつかめない、ペンで上手に書けない・字が下手になった。ボタン掛けができないやりずらい。紐結びがうまくできない。手指の動作がぎこちない。物を落としてしまう。

◆下肢
足が痺れて、熱さ、痛さ、足の着地感が鈍い、わからない
脚がもつれる、脚に力が入らない、足が上がらない、つまずく、よく転ぶ、つかまる物が必要

◆胱・肛門
尿意が鈍い、尿の勢いが弱い、失禁、尿が出にくい
肛門周囲のしびれ、肛門の締りが悪い

筋力の低下が進行している。強い痛みが軽快しない。急速に悪化している。
痺れ、麻痺がある。日常生活に不自由を感じるようになった。

このようなときは手術の対象となります。

※手術で改善されますが、症状が残ることもあります。特にしびれは残りやすいです。
神経根症で手術をすることは少ないです。痛みだけで手術をすることはないです!


脊髄の細胞はとてもデリケートです。変性すると手術をしても元に戻りません!
症状が出てから時間が経過するほど神経細胞は変性します。
同じ症状の人でも改善は異なります。個人差があります!
神経症状やまた心理的要因によっても結果が変わってきます。





手術の時期は?
(脊椎脊髄病専門医(主治医)からいただいたコメントより抜粋)
脊髄症で、今はボーダーラインで手術を必要としない場合でも、一般的に考えれば5年後は今の状態よりは進行している可能性が高いといえます。ということは、いつかは手術が必要となる可能性が高いということ。いつか手術するなら早いうちに… という考え方もあります。また、とことん粘ってから手術…という考え方もあります。但し脊髄はあまり粘ると細胞が死んでしまって手術しても生き返りませんから、どこまで粘るか?が問題です。
麻痺がなければ手術を先にのばしても大きな問題はありませんが、麻痺があるときは手術を先に延ばすことによって脊髄の神経細胞が死んでしまう割合が増えますので、手術しても改善しない割合が多くなります。
明らかな麻痺はないが脊柱管狭窄があって将来悪くなる可能性がある患者さんはいつ手術したら良いのか?は判断が難しいですね。
脊髄損傷の危険性があるから早めに手術してしまうという考え方もありますが、
日常生活に不自由を感じた時が手術のタイミングと思います。


手術はいつ?
早い段階で手術をするのがよい?
症状が出てから6ヶ月以内なら改善は良好?
脊柱管狭窄は症状が軽くても予防的に手術する?


手術はしたくない!怖い!でも…
迷ったときはセカンドオピニオンを受けてよく考えましょう!


セカンドオピニオンの受け方
セカンドオピニオンを受けたいと主治医に申し出る
どの病院・医師にセカンドオピニオンを受けるか決める
主治医に紹介状を書いてもらう。必ずX-PやMRIを借りる
セカンドオピニオンを受ける病院に電話して予約を取る
セカンドオピニオンを受けたら、結果を主治医に報告しましょう
主治医にお願いする。又は、他の医師にお願いする。
もうしばらく考えてから決める。
自分に納得できる医師を選びましょう!



★頚椎椎間板ヘルニア/頚椎疾患の手術法

頚椎椎間板の手術方法は?

前方除圧術---脊髄の前から脊髄、神経根を除圧する
後方除圧術---脊髄の後ろから脊髄、神経根を除圧する

前方法、後方法、それぞれ一長一短です。
前方法、後方法、どちらを選択するかは手術をする医師の考え方でまちまちです。


◆前方除圧術
骨移植術が必要で前方除圧固定術ともいう
1~2個の椎間の圧迫。脊柱管狭窄がないかあっても軽症。頚椎後湾である。
手術時間は、1椎間固定術で約2時間。2椎間固定術で約3時間
輸血は、不要のことが多い
手術後の安静期間は、手術の翌日から座位・立位・歩行が可能
頚椎カラー着用は、4~8週間必要
入院期間は、約2週間

首の前中央から少し横側から、1椎間では横に、2椎間では縦にメスを入れて(約5~10cm)、気管、食道、神経などを避けて椎間板を除去します。自分の骨盤や腓骨から骨を採取、骨移植して固定します。人工骨、チタン金属で固定する場合もある。
前方除圧術では確実に組織を取り除くことができ、後ろ側の靱帯や椎弓、筋肉の損傷がなく、出血量も少ない。
手術の欠点は、骨移植が必要。


◆後方除圧術 椎弓形成術 椎弓切除術
後方除圧が必要な圧迫性頚髄症
手術の対象となるのは、頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症、頚椎後縦靱帯骨化症、頚部脊柱管狭窄症、脊髄腫瘍(脊髄硬膜内髄内腫瘍・脊髄硬膜内髄外腫瘍)、
脊髄症状や多椎間の圧迫がある場合にこの術法を行います。
骨移植は、術式によっては必要
手術時間は、骨移植のない4~5椎弓形成術の場合で約2~3時間
輸血は、不要のことが多い
手術後の安静期間は、手術の翌日から座位、立位、歩行が可能
入院期間は、約2週間
手術の欠点は、頚椎後方の筋肉を痛める。術式によっては骨移植が必要。

首の後ろ中心を縦にメスを入れて(約10cm)、椎弓を切り開いて脊柱管を拡大し、脊髄を解放する。


椎弓を拡大して脊髄圧迫を除きます。

後方から行います。首の中心を縦にメスをいれて、椎弓の横片側を切り開き、反対側も削って溝を掘って兆番にし椎弓を広げます。
脊柱管を拡大して圧迫をなくします。
頭をヘッドピンで固定して手術を行います。(固定しないこともある)
骨移植は不要です。
手術時間は、4~5椎弓形成術で、約2~3時間
輸血は不要のことが多いです
手術の翌日より、座位、立位、歩行が可能で、リハビリを開始します。
入院期間は約2週間
早く社会復帰できます。
手術後の頚椎カラーは不要ですが、着けることもあります。


◆正中縦割式脊柱管拡大術
後方から行います。首の中心を縦にメスをいれて、椎弓の中心を縦に切って両開きします。開いた箇所に骨(人工骨)を移植します。

温存型正中縦割式脊柱管拡大術
後方から行います。付随する筋肉を温存して行います。
スペーサーで固定します。

★椎弓形成術による除圧術は、他にもいろんな術法があります。
筋温存型片側椎間孔拡大術、
選択的、非連続的、椎弓形成術、
椎弓間除圧術など
(術式によっては骨移植が必要です)



★各種椎弓形成術に共通の欠点は
頚椎後方の筋肉を痛める
手術後、軸性疼痛がみられることがある
手術前に比べ頚椎の可動域が減少します
数%の症例で術後上肢麻痺が発症することがあります
拡大した椎弓が戻ることがある

★手術時間は
1椎間固定術…約2時間
2椎間固定術…約3時間

輸血は、不要のことが多いです
手術後は、手術の翌日から座位、立位歩行可能です。リハビリを行います。
入院期間は、約2週間です

骨移植が必要です。
骨移植術は、自分の骨盤や腓骨から採集して背骨を固めます
他に、他人の骨、人工骨
移植した骨がずれないように、頚椎カラーは4~8週間必要です
入浴、就寝時以外は装着します(起き上がる前に装着します)



顕微鏡下で行う手術法
前方より圧迫している部分のヘルニアを取り除いた後は、チタンケージで固定します。自骨採骨術の必要がなく、翌日には歩行が可能です。入院期間が短いので早く社会復帰できます。

レーザー手術
ヘルニアが靱帯に囲まれていて椎間板内圧が高いとレーザー手術に期待できそうです。
ヘルニアが靱帯を破って椎間板内圧が低いと、レーザーによる治療は適応されない。





頚椎手術の合併症、手術後の後遺症について!

頚(首)の動きが悪くなる
後方除圧術…動く範囲が半分ぐらいになる(約80%)
前方固定術…固定椎間の数が増えると動きが悪くなる(約80%)
※後ろを向き難くなるが、日常生活に支障はない

頚(首)の痛み、肩こり
後方除圧術…約50%にみられます
前方固定術…約30%にみられます
※経過と共に軽減します

四肢の痺れ
手足の動きは良くなっても、痺れは残ることが多いです
※脊髄変性の程度によって異なります

上肢の運動、知覚麻痺
後方除圧術、前方固定術ともに数%に起こりますが、原因はよく分かっていない。
片側の肩の麻痺が最も多い(C5麻痺)
※約75%は数ヶ月で自然に治ります

血腫による麻痺
後方除圧では1~2%の発生率。手術後数時間で起こることが多い
片側の肩の激痛→上肢麻痺→四肢麻痺と広がる
※大至急創を開いて血の塊を取り除く

手術直後の四肢麻痺
手術中の脊髄の刺激で起こる
※椎弓切除術の時代で時々発生したが、手術機器の進歩で減少

創の感染
合併症(糖尿病など)のある人は起きやすい

髄液
脊髄は硬膜に包まれていて、その中を髄液が循環している
硬膜が傷ついて穴があいて髄液が漏れることがある
皮膚の下に髄液が溜まって、手術後に処置が必要となることがある。
0.1%~0.5%の発生率?

深部静脈血栓症による肺梗塞
手術後1週間以内に胸部痛、息苦しさで発症することが多い
エコノミー症候群と同じ
無症候性のこともあるが、死亡例もある
※フットポンプ、弾性ストッキング、足首の運動などで血栓形成を予防する

後方除圧術で、持ち上げた椎弓の落ち込み
無症状のことが多い、自然に軽快することが多いが、良くならない場合は再手術

前方除圧固定術後の移植骨の脱転
近年では多椎間固定をするときには最初から金属を使って移植骨の脱転を予防しています

移植骨がつかない
絶えられない痛みや麻痺の悪化がなければ再手術は不要です。

頚椎の手術後に飲む薬は?
手術後の2日間は抗生物質の点滴を行います。
痛み止めは内服薬と座薬を使用できます。
退院後は痛め止めの内服薬を処方してもらいます。

手術の入院費用は?
平均20~30万円(個室は別途に必要)
高額医療費として申請して認められると自己負担限度額が超えた分が支給されます。

手術をすれば良くなる!の意味の違い。
良くなる=発症以前の状態に戻って完全に回復する

 ではなく、
良くなる=症状改善、悪化予防
手術をすれば症状が今よりも良くなる。今以上に悪化しない。なのです。


症状が出てからの日数

症状進行のスピード(急性悪化?緩徐進行?)

合併症の有無(糖尿病、心臓疾患、脳血管疾患など)

社会生活上の問題(家族形態や職業など)

患者本人、家族の希望

これらを考慮して手術の適・否を決めます。


くれぐれも手術をされる医師とよく相談して、十分な説明を受けた上で納得してから手術を受けてください
セカンドオピニオンをおススメします。






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※整形外科医師(日本脊椎脊髄病学会指導医)による参考資料を基に作成しています